翌日、快晴下を上高地へと下る。
一週間の滞在の地を、仰ぎ見る。
この夏の日々は余りにも優しく穏やかで、
混沌の脅威は常に潜在するものの、清冽な命の営みに満ち溢れていた。
それはもはや叶えられぬ、最後の慈愛の時なのか。
炎熱と黒煙の渦巻く暗闇の地で、この静かな美の形象を、記憶の奥に留めよう。
嘗て在り得た世界として、果て知れぬ未来への礎として。
扉
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