尾根筋に近づくと、ガレ場の状態は極めて不安定になり、  

歩を進める毎に、周辺の岩礫帯が、一斉に動き出そうとする。  

ここでは岩なだれの恐怖が、まさに現実のものとなっていた。 

岩たちを騙し騙し慎重に道筋を辿り、天狗のコルに到着。 

辺りは既に霧に閉ざされ、完全崩壊したコンクリート造りの 

避難小屋跡近くで、小さな生命が息づいていた。