一時の宥和の幻想は、儚くも潰え去り、 

縛りを逃れた粗き力は、歓喜の宴に酔い痴れて、 

同一状態の亢進は、大いなる狂気と破壊を呼び寄せる。 

 

アイロニーが相克するこの「新世紀」に、 

自ずと自然の緩衝帯も、消滅へと向かう。 

過剰なまでに降り注ぐ、光と熱。 

天は大量の蒸気に満ち溢れ、不吉な黒雲が地上を覆う。

 

2000年3月下旬、 

鳳凰山薬師岳に、小武川方面より登る。 

天候悪化と気温低下に、極度の疲労が重なり、 

午後遅く、標高2000m程の小鞍部に至るころには、 

自力での体温維持が、困難になりつつあった。 

直ちにキャンプを設営、暖かな食事と暖房により事なきをえる。 

翌朝、天気は快晴、山頂へと至る。強風と低温の厳しい条件下、 

太陽が、ただ燦然と輝いていた。