誰に出会うこともなく、 厳寒の地で唯一人、
こうして留まり続けたのは、何故だったのか。
数十年後の今となって、この過去の旅路の意味と意義は、
こうして蘇った形姿を通して、なおも実感されうるのか。
己の生と存在の、全てをここに注ぎ込み、
他のあらゆる富と価値とを、無雑作にも投げ棄てて、
間違いなくお前は、この時間と世界とを確保した。
そしてそこで現に見た。
物質たちが演じている、この上なく精緻で、
この上なく深遠な戯れの、驚異の姿の数々を。
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