翌日最終日、発達した低気圧が列島南岸を東へ進み、

山は荒天に見舞われた。      

      

強風が上下に旋回しながら押し寄せて、   

荷を含めて100sほどの体を軽々と持ち上げて、    

瞬時に地面に叩きつける。      

倒れ、這いつくばり、起き上がを、    

ただひたすら繰り返しながら岩稜を進み、    

大門沢下降点付近にようやく近づいた時、      

太陽光が差し込み、風景が開かれた。     

そして嵐の「形態」を、その目で捉えた。   

     

これをもって山旅は完結し、私は奈良田へ下った。